その他研修MEDICAL TRAINING
研修・勉強会記録
2025年1月
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この深刻な状況をいかに乗り越えてゆくか、現在は各医療機関ともに手探りの状況だと思いますが、当院では足立院長のもと“多職種連携の強化”と“医療DX”で乗り越えようと取り組んでいます。
とりわけ、墨東人財育成センターでは、多職種連携の強化において力を入れています。これまで、医療者への卒後教育は職種毎、部門毎、部署毎と縦割りで行われてきました。もちろん、このような専門性の高い教育は引き続き必要ですが、今後多職種連携を強化してゆくためには、職種を超えた多職種間での教育の機会も増やしてゆく必要があります。
そこで、今回トピックとして取り上げたのが“ウェルビーイング、組織風土の醸成”です。
ウェルビーイングとば、“身体的・精神的・社会的に健康で幸福な生活を送れる状態”です。
患者さんへ接することの多い医療者は、患者さんのウェルビーイングをサポートするためには、医療者自身もウェルビーイングを達成しなければなりません。
医療者のウェルビーイングを向上させる要素には様々ありますが、この中でも特に重要とされる“ポジティブ感情”の有用性を講義で学びました。
さらに、このポジティブ感情をどのように職場や家庭で活用できるかを実際に参加者同士のディスカッションを通じて学びました。
講義ではうつむきがちだった参加者の方々も、ディスカッションでは活き活きと話している姿をみて、普段からこうした活き活きとした会話こそがポジティブ感情さらにはウェルビーイングへつながることを実感しました。
また、ポジティブ感情だけではなくネガティブ感情についても話し合う機会がありました。参加者からの率直な気持ちを聞きながら、時につらいことを同僚へ打ち明けることの重要性も感じました。
普段共に働くことのない他職種の医療者と出会い、またなかなか話し合うことのないポジティブ・ネガティブ感情について話す機会もあり、実りの多いワークショップとなりました。
2024年12月
成人の心肺蘇生法のように出生時を中心とした新生児を対象とする蘇生法があります。
日本においては、「JRC蘇生ガイドライン2020」に基づくNeonatal Cardio-Pulmonary Resuscitation(NCPR)が用いられ、日本周産期・新生児医学主催の新生児蘇生法普及事業からライセンスを得ることができます。
病院内・外部の周産期医療者を対象に新生児蘇生普及事業公認「新生児蘇生法:専門コース・スキルアップコース」を開催しています。
区東部地域の周産期医療者を対象とした講習会は年2回、開催しています。
講習会開催の相談も受け付けております。
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- 実際の蘇生場面に立ち会ったことがなかったけど受講後に蘇生場面に遭遇しました。日頃からのトレーニングが重要だと感じました。
- 興味がある講習だった。実際には蘇生をやったことがなかったので受講できて良かった。
- 楽しみながら学ぶことができました。
- ブリーフィング(事前打ち合わせ)の大切さを学びました。
インストラクター目指して頑張ります。 - まじめだけど和やかな雰囲気で緊張しすぎず受講できました。
担当:新生児集中ケア認定看護師 墨東病院NCPRインストラクター一同
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多職種連携に尽力しており、NICU/GCUの赤ちゃん病棟にも介入しております。左はNICU看護師からNIDCAP学習会講義をうけている場面です。
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毎月の科内勉強会では、学会発表した論文の発表や、各自でテーマを決めて講義する等、個々の研鑽にも努めております。
院内Moodleでの自己研鑽用資料にも協力しております。
2015年から続く当院JMECCコース、今回で10年目の節目を迎えることができました。
水谷研修委員会委員長をはじめ院内外インストラクター12名が中心となり、10名の院内受講生を対象に一次・二次救命処置と内科救急を1日にわたり座学と実習を交えて教えてくれました。
写真のとおり受講生はほとんどが初期研修医でしたが、みな熱心にセミナーに取り組んでくれました。
JMECCコースは当院で独自に行っている墨東クリティカルケアセミナーと異なり対象は医師ですが、内科学会が公認するコースであることが大きなポイントで、当院のような地域基幹病院では今後も定期的な開催が求められています。
墨東人財育成センターでは、このような臨床研修で求められるセミナーも引き続きサポートしてゆきます。
超急性期病院 墨東をめざして
「認知症があっても身体疾患の治療を安心して受けたい!」を実現するために、医師、認知症看護認定看護師、社会福祉士、薬剤師、病棟看護師がチームとなってケアを行っています。
担当:認知症看護認定看護師
2024年11月
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今週1週間はその中間発表会で、本日は人財育成センターのアドバイザリーである東京情報大学の松下博宣先生が来院されました。
今後、多職種連携の取り組みは当院の発展向上に不可欠であり、今回の活動を通じて各職員のモチベーションが上がるとても良い機会となりました。
2024年10月
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2024年9月
特に、小児科領域は普段診療に携わっていないスタッフも多く、とても勉強になったようです。
このセミナーで学んだことを活かして、今後の診療や院内の医療安全に役立ててください!
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2024年8月
今年は、明治薬科大学より前半、後半各8日間に合計4名の薬学生の方に参加いただきました。内容は、実際に医薬品に触ってもらい、病院薬剤師の業務を体験してもらいました。
薬学生でも4年生では、病院での薬剤師業務についてはあまり理解されていないようで、参加者からは、調剤室などに入るのは初めてで、薬剤師の仕事について、理解できたという感想や、薬剤師の業務を責任もって行うことが重要だという感想を述べられていました。
薬学生インターンシップ(有償)は来年度も継続して行う予定です。多くの薬学生の参加をお待ちしています。
発表は、「東京都立墨東病院せん妄患者におけるレンボレキサントと併用薬における薬物間相互作用と有害事象調査」という演題で野田薬剤師が発表し、もう一つは、「薬薬連携における常用薬の入院前準備~『プレ・ポストホスピタル』導入について~」という演題で倉持薬剤師が発表しました。
一題目は当院が連携を行っている明治薬科大学との共同研究で、せん妄患者に投与されるレンボレキサントについて、併用薬と夜間転倒の関係についての調査結果を発表しました。また、二題目は、入院前の常用薬確認において、入院後服用する内服薬をあらかじめ、保険薬局で再調剤してもらうという業務改善についての取り組みを紹介しました。
いずれの発表も多くの参加者が見に来ており、関心の高さを改めて感じました。
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2024年7月
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2024年6月
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3回を1コースとして今年度は2コース開催される予定で、第1回目はRRS対応、気道管理、人工呼吸管理、鎮静・鎮痛管理について学んでいただきました。城東地区の広域基幹病院である当院にとって、退院後も診療を要する患者様をスムーズに地域へつないでゆくケア移行は大きな課題です。
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2024年5月
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2024年3月
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全国30施設合同で毎週火曜日に行われている多施設ジャーナルクラブ、今週は当院救急科シニアの詫摩先生が発表してくれました。
今回のお題は、“Indivisualised, short-course antibiotic treatment versus usual long-course treatment for ventilator-associated pneumonia (REGARD-VAP): a multicentre, individually randomized, open-label, non-inferiority trial” (Lancet Respir Med 2024; S2213-2600(23)00418-6)です。
人工呼吸器関連肺炎(VAP)の診断は難しく、これまで抗菌薬過剰投与による抗菌薬耐性が懸念され、今回VAPに対する抗菌薬の投与期間を短縮できないかどうか検討されました。
本研究におけるPICOは、次のとおりです。
P:VAP診断基準を満たしたICUの成人患者
I: 個別短期治療群
C:通常治療群
O:60日後の死亡と肺炎再発の複合エンドポイント
本研究は、タイをメインとした東南アジア39のICUで行われ、18歳以上でCDCのVAP診断基準を満たし、重症疾患や7日間以上の抗菌薬投与がなく7日以内に解熱もしくはショックのない461名が無作為化されました。
抗菌薬の総投与期間は、個別短期治療群(n=232)では7日間以内、通常治療群(n=229)では8日以上と設定されました。
主要アウトカムである60日以内の死亡または肺炎再発の複合エンドポイントのうち、後者の診断は集中治療医、感染症医、呼吸器内科医の2名以上の同意で行われました。
本研究では、非劣性マージンを12%と設定し、非劣性が証明された場合に優越性を解析しました。
主要アウトカムは、個別短期治療群 vs 通常治療群でITT解析、per protocol解析いずれにおいても41% vs 44%と非劣性を満たしました。そのため、優越性試験を実施しましたが、優越性は示せませんでした。
副次アウトカムでは、個別短期間治療群で抗菌薬の投与期間が5.2日間短縮された一方、両群間で入院期間やICU滞在期間に有意差はなく、通常治療群で腎機能障害を初めとする薬剤副作用が多く見られました。なお、サブグループ解析ではいずれも両群間に有意差は認めませんでした。
上記結果から、個別短期治療群が(通常治療群と比較し)60日死亡率と肺炎再発率において非劣性を示したのと同時に抗菌薬による副作用を減らすことが示されました。
また、抗菌薬の中止基準として体温や血圧と行った簡便な指標であることから、VAPが蔓延する低中所得国においても実践可能で指標となりうることが示唆されました。
その一方で、本研究の問題点として肺炎の再発単独の評価が不明であること、アンチバイオグラムや抗菌薬の具体的なレジメンの記載がないこと、VAPまでの気管挿管期間が14日間と長いことが、ジャーナルクラブ内でディスカッションされました。
本研究を通じて、臨床経過のよいVAPに対しては抗菌薬の投与期間を短縮できる可能性が示されましたが、従来から問題となっているブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌に対しては 引き続き投与期間の検討が必要であると考えられました。
【牧野集中治療科部長からコメント】
詫摩先生は明るいムードメーカーでありながら、発表前はそわそわしてどこか心配性な 一面もみせるお茶目な先生で、みなから愛されています。
将来は外傷救急医を目指しているとのこと、ぜひこれからも頑張って下さい!
2024年2月
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先日行われた第19回東京都福祉保健医療学会において、当院ICU所属の加藤建吾診療看護師(NP)がみごと看護分野最優秀賞を受賞しました。
その風貌やキャラクターで皆から愛され、医療の面においても既に大きな信頼を得ている加藤診療看護師ですが、今回新たに大きな勲章を手に入れることができました。
今後の活躍が楽しみな若きリーダーですが、引き続き皆様からのご支援をよろしくお願いいたします。
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2024年1月
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墨東クリティカルケアセミナー(BTCCS)は、集中治療を専門としない医療者(主に中堅看護師、研修医)を対象に、講義とシミュレーションを通じて重症管理を学ぶコースです。
今年1回目のBTCCSが先日開催され、血液ガス、気道確保、人工呼吸管理、鎮静・鎮痛管理(PADIS)を取り上げました。
とりわけ、気道管理と人工呼吸管理への受講生の関心は高く、みな熱心に聴講していました。
コースを学んだ受講生が、学んだ知識を活かして院内の医療安全に貢献してもらえることを期待しています。
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昨年12月は、呼吸器内科シニアレジデントの北野先生、ジュニアレジデント2年目の久山先生、駒込病院ジュニアレジデント2年目の五味川先生という、3名の先生方がICUをローテートしてくださいました。
みなそれぞれ際立った個性で我々集中治療科スタッフも楽しませていただきました。
また、三者三様みなよく勉強しており、当科フェローとスタッフの教育熱もいっそう力がこもったため年末の個別症例検討会も盛り上がり、みな満足の1ヶ月でした。
引き続き、残りの研修も頑張って下さい。
2023年12月
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毎週火曜日に全国30施設がウェブ上で最新の医学論文を批判的吟味する「JSEPTIC多施設ジャーナルクラブ」において、当院集中治療フェローである上石医師が発表してくれました。
今回のお題は、ARDSの発症リスクがある外傷患者に対し"Sigh ventilationは臨床転帰を改善するか"でした(The SiVent Randomized Clinical Trial JAMA 2023;330(20):1982-90)。
読者の皆様は、“Sigh ventilation“をご存じでしょうか?
“sigh”で調べたところ“ため息“という和訳が出てきたので、“sigh ventilation“はさながら“ため息(人工)呼吸“といった意味になるでしょうか?
ARDSの病態生理学では、不適切に低いPEEPで生じる無気肺から生じるAtelectraumaと肺胞の過膨張から生じるVolutraumaがその機序としてよく知られていますが、肺サーファクトの減少がその発症機序へ関与していることはあまり知られていません。
肺サーファクタントは、一定の換気量で人工呼吸を続けていると不活化されて肺胞が虚脱し無気肺(Atelectrauma)からARDSへ至るとされています。
Sigh ventilation(PEEPを増やす)を定期的に行うと、II型肺胞上皮細胞が刺激されて肺サーファクタントが増加し、Atelectraumaの予防が期待されています。
これまでの複数の先行研究では、ARDSに対する短期間のSigh ventilationが酸素化と肺コンプライアンスを改善し、その安全性も確認されました。
今回の研究では、P:人工呼吸管理を要する外傷患者を対象に、I: 通常の人工呼吸管理に加えてSigh ventilationを行った患者を介入群として、C:通常の人工呼吸管理のみを実施した患者を対照群として、O: Ventilator free daysを主要アウトカムと設定されました。
本研究は、米国国防総省の資金提供の下、米国15施設の外傷センターで2016年4月~2022年9月に行われた多施設非盲検無作為化試験です。
外傷で入院した患者のうちARDSの危険因子(①外傷性脳損傷、②1カ所以上の長管骨骨折、③ショック、④肺挫傷、⑤治療開始後24時間以内に血液製剤を6単位以上投与)のいずれかを認めた患者が対象となりました。
対象患者は、人工呼吸管理開始後24時間以内に介入が行われ、介入群ではSigh ventilationとして6分間に1回、5秒間のSigh volume(プラトー圧が35cmH2Oになる換気量)が呼吸療法士の監視下で行われました。
サンプルサイズは、先行研究結果から当初916名と設定しましたが、初回中間解析から544名に下方修正され、主要アウトカムであるVentilator free daysはWilcoxonの順位和検定で解析しました。
5,753名の組み入れ患者のうち524名(介入群261名と対照群263名)が割付けられ、最終的に介入群259名と対照群261名が主要解析へ組み込まれました。
結果は、対象患者の背景に両群間の差はなく、平均年齢は44歳、75%が男性、リスク因子は60%が頭部外傷、41%が肺挫傷、36%が輸血、31%がショック、組み入れ時のP/Fは350、初回胸部CTで70%は異常所見なし、でした。
主要アウトカムであるVentilator free daysは介入群 vs 対照群で18.4 (IQR 7.0-25.2) vs 16.1 (IQR 1.1-24.4) [P=0.08]で両群間に有意差を認めませんでした。
副次アウトカムでは、介入群で28日死亡率が低い傾向 [介入群 vs 対照群: 11.6% vs 17.6%; OR: 0.61(95%CI, 0.37-1.00); P=0.05]だったものの、それ以外のICU free daysや死亡までの日数、合併症、死因、有害事象のアウトカムは両群間に有意差を認めず、サブグループ解析でも有意差を認めませんでした。
筆者らは、Discussionで主要アウトカムであるVentilator free daysに有意差が出なかった理由の一つとして統計学的解析で競合リスク法ではなく、従来のWilcoxon順位和検定を用いたことを挙げました。
また、Sigh ventilationのメリットとしてrecruit maneuverと比較し高い気道内圧の時間が少ないことで低血圧(や気胸などの肺損傷)を減らせることを指摘しました。
本研究の限界は、動脈血液ガスや画像検査の評価項目としていないこと、外傷患者に限定しておりARDS発症リスクも低い患者群であったこと、盲検化しておらず主要アウトカムの因子となる抜管タイミングは医療者に左右されること、などでした。
以上の結果から本研究の結論は、“ARDS 発症危険因子を有する人工呼吸を要する外傷患者においてSigh ventilation を追加しても VFDs は有意に増加しなかった副次アウトカムの結果からは忍容性が高く、臨床転帰を改善する可能性は示唆された”でした。
本研究の内的妥当性は、抜管を決定する医療者が非盲検化されているために情報バイアスがあること、研究資金の提供が途中で打ち切られて目標対象数へ達しなかったこと 、外的妥当性としては日本人を含むアジア人種が1%と少なく性別差も異なること、人工呼吸器が限られていること、などから内的にも外的にも妥当性に疑問が残る研究でした。
【牧野集中治療科部長からコメント】
今回発表してくれた上石先生は、見た目のとおり(?)ガッツのあるラガーマンで、ハキハキとした明るい性格と仕事へ熱心に取り組む姿から、スタッフにも愛されているフェローです。
今後も、One for all , All for oneの精神で若い力を存分に発揮し、ICUを盛り上げていってください!
昨年度の組織学習プロセス(社会的感情学習)、組織風土とリーダーシップ、に続く第3弾です。
2024年4月に始まった医療者の働き方改革は、医療者個人のQOLは向上させましたが、その反面現場の医療者不足に拍車をかけて院内医療安全を低下させるリスクを高めました。