研修・勉強会記録TRAINING RECORD

集中治療科(ICU)

2024.03.15

多施設ジャーナルクラブでの発表2

全国30施設合同で毎週火曜日に行われている多施設ジャーナルクラブ、今週は当院救急科シニアの詫摩先生が発表してくれました。

今回のお題は、“Indivisualised, short-course antibiotic treatment versus usual long-course treatment for ventilator-associated pneumonia (REGARD-VAP): a multicentre, individually randomized, open-label, non-inferiority trial”  (Lancet Respir Med 2024; S2213-2600(23)00418-6)です。


人工呼吸器関連肺炎(VAP)の診断は難しく、これまで抗菌薬過剰投与による抗菌薬耐性が懸念され、今回VAPに対する抗菌薬の投与期間を短縮できないかどうか検討されました。

本研究におけるPICOは、次のとおりです。

P:VAP診断基準を満たしたICUの成人患者

I: 個別短期治療群

C:通常治療群

O:60日後の死亡と肺炎再発の複合エンドポイント


本研究は、タイをメインとした東南アジア39のICUで行われ、18歳以上でCDCのVAP診断基準を満たし、重症疾患や7日間以上の抗菌薬投与がなく7日以内に解熱もしくはショックのない461名が無作為化されました。

抗菌薬の総投与期間は、個別短期治療群(n=232)では7日間以内、通常治療群(n=229)では8日以上と設定されました。

主要アウトカムである60日以内の死亡または肺炎再発の複合エンドポイントのうち、後者の診断は集中治療医、感染症医、呼吸器内科医の2名以上の同意で行われました。

本研究では、非劣性マージンを12%と設定し、非劣性が証明された場合に優越性を解析しました。

主要アウトカムは、個別短期治療群 vs 通常治療群でITT解析、per protocol解析いずれにおいても41% vs 44%と非劣性を満たしました。そのため、優越性試験を実施しましたが、優越性は示せませんでした。

副次アウトカムでは、個別短期間治療群で抗菌薬の投与期間が5.2日間短縮された一方、両群間で入院期間やICU滞在期間に有意差はなく、通常治療群で腎機能障害を初めとする薬剤副作用が多く見られました。なお、サブグループ解析ではいずれも両群間に有意差は認めませんでした。

上記結果から、個別短期治療群が(通常治療群と比較し)60日死亡率と肺炎再発率において非劣性を示したのと同時に抗菌薬による副作用を減らすことが示されました。

また、抗菌薬の中止基準として体温や血圧と行った簡便な指標であることから、VAPが蔓延する低中所得国においても実践可能で指標となりうることが示唆されました。

その一方で、本研究の問題点として肺炎の再発単独の評価が不明であること、アンチバイオグラムや抗菌薬の具体的なレジメンの記載がないこと、VAPまでの気管挿管期間が14日間と長いことが、ジャーナルクラブ内でディスカッションされました。

本研究を通じて、臨床経過のよいVAPに対しては抗菌薬の投与期間を短縮できる可能性が示されましたが、従来から問題となっているブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌に対しては 引き続き投与期間の検討が必要であると考えられました。


【牧野集中治療科部長からコメント】

詫摩先生は明るいムードメーカーでありながら、発表前はそわそわしてどこか心配性な 一面もみせるお茶目な先生で、みなから愛されています。

将来は外傷救急医を目指しているとのこと、ぜひこれからも頑張って下さい!